── オンラインサロンを運営する、佐藤耕平さんの実例から
オンラインサロン「FriendsBubble」を運営しながら、複数の仕事に携わりつつ、仕事と生活を行き来する日々を送っている。
日常の中で立ち止まる感覚や、割り切れなさを覚えることもあるが、それを特別な出来事として切り分けて語ることはない。
この記事は、進み方や正解を示すためのものではなく、今の仕事や生活のあり方を、そのまま記録したものだ。
プロフィール
名前:佐藤耕平
活動エリア:神奈川・東京
肩書き:合同会社RAPPORT 代表社員
主な仕事・活動内容
オンラインサロンの運営を中心に、人と人との関係性を軸にした事業を行っている。
営業経験をベースに、コミュニティづくりや対話の場に関わる。
これまでの経歴・経験
高校卒業後、社会福祉分野に進み、その後、営業の世界へと移行した。複数の事業や現場を経験するなかで、働き方や人との関わり方を模索し続けてきた。結婚と子育てを経て、生活の軸は家庭へと移っている。
各種ページ・SNS
【Instagram】オンラインサロンFriendsBubble
【HP】オンラインサロンFriendsBubble

言葉に「温度」があるかどうか
彼は、言葉をすべて同じ重さで受け取らない。
そこには、はっきりとした感覚の違いがある。
たとえば、事業について
「もっと単価を上げたほうがいい」
「上の層とつながったほうが早い」
そう言われる場面もたくさんあった。
「内容じゃなくて、温度がないなって思った」
その言葉は、正しいかどうか以前に、自分の中に入ってこなかったという。
相手がどこまで自分や場の背景を知っているのか。
そこまでの時間や関係があるのか。
それが感じられない言葉は、受け止める前に、自然と手放される。
一方で、時間をかけてやり取りしてきた人の言葉は違う。
「一回受け入れてから、考えるところまで行く」
受け入れるかどうかは、その後に決める。
ただ、その手前の「入る・入らない」が、彼の中でははっきり分かれている。
介護の現場にいた頃
社会人になって最初に経験したのは、介護の仕事。
人の生活に、直接関わる現場だった。

思うようにいかないことも多かった。
体力的にも、精神的にも消耗する日が続いた。
「きれいごとだけじゃ続かない仕事だった」
ただ、そこで見た人の姿や、
家族との関係性は、
その後もずっと頭に残っている。
人が弱る場面、
頼らざるを得なくなる場面を、
早い段階で見てきた経験は、
今の価値観の下地になっている。
オンラインサロンを始めた理由
オンラインサロンを始めた理由を、
彼は大きな目標や理想として語ることはない。
営業や事業を続ける中で、
数字や効率だけでは測れない部分があると感じる場面が増えていった。
成果が出ているかどうか。
伸びているかどうか。
そうした指標では説明できない関係や、
子どものころのようなメリットではない繋がりが、
自分にとっては大事だった。
人が人として関われる場所を、残したかった。
ただ、そうした感覚は、
事業の文脈では扱いにくいことも多い。
規模やスピード、再現性。
話が進むほど、
関係の質よりも効率が前に出ていく。

その一方で、
収入や選択肢が、
自分の意思とは別のところで左右されていく感覚もあった。
景気や社会の流れ。
自分ではどうにもならない要素が、
生活の前提になっていくことへの不安。
「このままだと、
誰かの判断に、
自分の将来を預けることになるなって思った」
オンラインサロンという形は、
拡大のためというより、
居場所と経済圏を足元につくるための選択だった。
人数についても、
強い理想や達成目標があったわけではない。
「1,000人」という数字は、
夢やビジョンというより、
ひとつの仮定に近い。
それくらいの規模があれば、
誰かの状況や、日本全体の動きに
過度に振り回されずにいられるかもしれない。
オンラインサロンは、
何かを増やすための場所ではなく、
人として関われる前提と、
生活を守る感覚を残すために続いている。
一番大切なものは、家族
今の彼は、仕事が終わると家に帰る。
それは「家庭を大事にしよう」と強く決めた結果というより、
いつの間にか、生活の前提になっていた。

以前は、帰らない生活だった。
夜遅くまで働き、
食事ができる店が限られる時間まで仕事を続けることも多かった。
「メリハリは、ほとんどなかった」
結婚を決めた頃から、
生活の重心が少しずつ動き始める。
家に帰る時間が増え、
家で過ごす時間の使い方が変わっていった。
「家に帰るのが、当たり前になった」
家では、仕事の連絡は最小限にしている。
特に、夜の時間の扱い方ははっきりしている。
子どもが寝たあと、
妻と話す時間が残っている日は、
スマートフォンには触らない。
「その時間は、片手間じゃ聞けない」
夜、家の中が静かになったあと、彼は聞く側に回る。
「俺は、ただ聞いてるだけなんですけどね」
話は一時間ほど続くこともある。
整理されていないままの言葉が、
途切れずに出てくることも多い。
途中で意見を挟むことはしない。
相槌を打ちながら、
言葉が落ち着くのを待つ。
しばらくすると、
話している相手の言葉が少しずつ整っていく。
「すっきりした、って言って寝る」
その夜があると、翌朝の空気が変わると、彼は経験的に知っている。
不安は、なくならない
落ち着いて見える、と言われることがある。
不安がなさそうだとも。
「不安は、ずっとある」
収入のこと、社会の変化、
家族を守れるかどうか。
不安が消えたことはない。
ただ、それを避けようとはしていない。
「前に進んでるときって、不安がある」
不安があるから、立ち止まらずに考え続けている。
過去は、すでにそこにある
彼の話には、何度か過去の出来事が出てくる。
高校時代のいじめ。
当時は、理由もはっきりしないまま、
居場所がなくなっていく感覚があった。

部活は、三年間続けた。
特別に結果が出たわけではない。
ただ、途中で投げ出さずに、
同じ場所に立ち続けた時間だった。
「過去は変えられないけど、
捉え方は変えられると思ってる」
その後も、出来事は途切れない。
相方との出会い。
コンサル会社への入社。
法人化。
コロナ禍。
相方との別れ。
退職。

生活や立場が、短い期間で何度も切り替わった。
結婚し、子どもが生まれ、
今は家に帰る生活を続けている。
日常が、特別な出来事で埋まっているわけではない。
仕事を終えて家に帰り、
家族と過ごし、夜が来る。
「日常が日常であることが、いちばんありがたい」
彼にとって、
最悪の状態は、未来にあるものではない。
「最悪は、もう過去にある」
そう言い切るというより、
そう捉えて生活している、というほうが近い。
過去を消したり、
乗り越えたことにしたりはしない。
すでに通ってきた場所として、
今の足元に、そのまま置かれている。

本人から
自分は、まだ途中にいます。
決まっていないことも多いし、うまく言葉にできないままの部分も残っています。
「不安ゼロで始めるものなんて、あんまりない」
整理できていない状態がなくなることは、たぶんないと思っています。
この記事を読んでいる人の中にも、同じように、何かを決めきれないまま、
日々を続けている人がいるかもしれません。
ただ、ここに立っている、という感覚だけはあります。
「今の場所は、嫌いじゃない」
そう思える瞬間があれば十分だと思っています。
編集後記
話を聞いているあいだ、答えを探している時間ではなかった。
彼は何度も「今、どこに立っているか」の話に戻っていた。
進んでいるとも、止まっているとも言い切らないまま、その場所を確かめているようだった。
言い切らないことを選び続けている、そんな取材だった。



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