パンピー図鑑|高橋 菜摘 ― 完璧じゃない毎日。それでも積み上げた先に、”信頼”が生まれる。

── スポーツサークルを主催してきた高橋菜摘さんの実例から

人との関わり方に、少し迷いを感じている人。

場づくりやコミュニティを続けたい気持ちはあるけれど、このままでいいのかと、ふと立ち止まっている人。

この記事では、スポーツサークルを続けてきた彼女の歩みをもとに、

人と関わり続けること。
やめずに場を保つこと。

その中で少しずつ育ってきた人との関係について、一人の実例としてお伝えしていく。


プロフィール

名前:高橋 菜摘(たかはし・なつみ)
活動エリア:東京都内
主な仕事・活動内容
遊園地での勤務を続けながら、スポーツサークル「LAUGHTER(ラフター)」を運営。主に、バドミントン・バスケットボール・キックボクシングを実施。運動の場づくりを通して、人が集い、《笑いの絶えない居場所づくり》を行っている。

これまでの経歴・経験
正社員、リゾートバイト、アルバイト、契約社員など、複数の働き方を経験しながら、27歳のときにスポーツサークル「LAUGHTER(ラフター)」を立ち上げ、継続的に運営している。

各種ページ・SNS
【Instagram】スポーツサークルLAUGHTER
【Instagram】高橋菜摘


人見知りだったけれど、人の輪に惹かれていた

彼女は、幼い頃から人見知りだったという。

知らない人と話すときには、すぐに言葉が出てくるタイプではなかった。

いつも様子を見ながら、場の空気をつかんでから動こうとしていた。

たとえば、外食に行ったとき。

店員さんに注文を聞かれても、自分から声を出すことができなかった。

母親に「自分で言ってみなよ」と促されても、首を振るだけで、黙ってしまう。

「店員さんに注文するのもできなくて。お母さんに“自分で言いなよ”って言われても、”いや、無理”って感じでした」

小学校は6年間ずっと1クラス。

人間関係が大きく入れ替わる経験は少なく、決まった人たちの中で過ごす時間が長かった。

それでも、人が集まっている場所には自然と目が向いた。

にぎやかな輪の中に入る勇気はなくても、そこにいる人たちを遠くから眺めている時間は嫌いではなかった。

当時を振り返り、彼女はこう話す。

「人が嫌いだったわけじゃないんです。人がいなかったら、楽しくないですしね」

関わることには慎重なところがあった。

声をかけるまでに時間がかかり、一歩を踏み出す前には、必ず立ち止まっていた。

けれど、人のいる場所そのものから離れたいと思ったことはなかった。

このときすでに、「人と関わりたい気持ち」と「踏み出せなさ」が、同時にあった。


視野が広がり、関係の形が変わった

学生時代、彼女はネットワークビジネスに出会った。

働き方やお金、人との関わり方について、それまで触れたことのなかった考え方を知る。

当時は、世界が一気に広がったように感じていたという。

動けば選択肢が増える。
外に出なければ、何も始まらない。
そんな感覚を、初めて実感した時期だった。

一方で、その変化は人間関係にも影響を及ぼした。

距離ができたのは、もともと浅い関係の人たちだけではなかった。

毎日のように連絡を取り合っていた友達。
悩みを共有し合い、「親友」と呼んでいた相手。

そうした存在との関係も切れていった。

当時のことを、彼女はこう振り返る。

「親友だと思っていた人も、離れていきました」

理由を説明する前に、すでに距離ができていた。

何かを言い合う場面すらないまま、連絡は返ってこなくなった。

「話す機会すらなかったのが、一番つらかったです」

勧誘したかったわけではない。

自分が何を考えていて、どんな気持ちで動いていたのか、ただ知ってほしかっただけだった。

それでも、「ネットワークをやっている人」というイメージだけが先に立ち、誤解を解く前に、関係は終わっていた。

「向こうは、私のことをそこまで信頼してなかったんだなって」

価値観が広がった一方で、これまで大切にしてきた関係が壊れていった。

この経験は、彼女の中に強く残った。

人と関わることそのものが怖くなったわけではない。

けれど、「誰と、どんな距離で関わるのか」を改めて考え直すきっかけになった。


人との距離を、自分で選ぶようになった

友人関係が一度崩れたあと、彼女は人との関わり方を見直すようになった。

誰とでもすぐに”心から”打ち解ける、という関係は選ばなくなった。

最初から深く踏み込むこともしない。
同時に、無理に壁をつくることもしない。

何度か会い、同じ時間を過ごす中で、少しずつ確かめていく。

本音で話せるかどうかが、一つの目安になった。

この感覚については、次のように整理している。

「信用と信頼は、別だと思っていて」

表面的にうまくやれる関係と、自分の弱さを見せられる関係は違う。

後から振り返ると、それまでの自分は、本音を出さずに関わってきた部分もあった。

「周りに合わせて、話を合わせてただけだったかもしれない」

人との関係は、数が多ければいいわけではなく、どれだけ信頼できる人がいるか。

この考え方は、その後の彼女の判断や場づくりにも影響していく。


LAUGHTER(ラフター)の立ち上げ

社会人になり、運動する機会が減った。
ジムにも通ってみたが、長くは続かなかった。

既存のサークルは、すでに関係ができあがっているように見え、そこに入っていくイメージが持てなかったという。

「知らない人の中に、いきなり入っていく感じが、ちょっと苦手で」

運動をしたい気持ちは、確かにあった。

それと同時に、自分が無理をせずにいられて、夢中になれるものが欲しかったとも話す。

その答えとして浮かんできたのが、自分で場をつくる、という選択だった。

27歳のとき、彼女はスポーツサークル「LAUGHTER(ラフター)」を立ち上げる。

最初は5〜7人ほど。
空いているコートを借り、自分がやりたかったスポーツに、知り合いが集まってくる。

そんな、シンプルな始まりだった。

場をつくる前に、考えていなかったわけではない。

目指していたのは、「笑いの絶えない居場所」

特別な仕組みやルールよりも、楽しく体を動かしているうちに、自然と人が増えていく。

そんな場でありたいと思っていたという。

「自分がやりたくてやってるスポーツに、周りが増えていくのが嬉しかったんです」

最初から、大きく広げることを急いでいたわけではない。

ただ、続けていけば、結果的に広がっていくものだとも感じていた。

続けやすいこと。
顔が見える関係であること。

その感覚を、意識的に選びながら、ラフターは少しずつ形になっていった。

このときの判断が、ラフターを「イベント」にとどめず、いつでも戻ってこられる居場所として育っていく土台になっていく。


ラフターを続けてきた理由

ラフターは、いつも順調だったわけではない。

人が集まらない日もあり、予定していた活動が静かに終わることもあった。

やめようと考えたことは、何度もある。
それでも、やめる選択はしなかった。

理由を聞かれると、彼女は少し考えてから答えた。

「続けていたら、何か起きるかもしれないと思って」

明確な目標があったわけではない、と彼女は話す。
将来の見通しも、当時は立っていなかった。

それでも、足を運んでくれる人たちのために、居場所を残し続けてきた。


小さな行動が、”信頼”を生んできた

現在、ラフターには350人ほどのメンバーが関わっている。

関係づくりについては、とても具体的な話をしてくれた。

挨拶をすること。
声をかけること。
名前を呼ぶこと。

「名前を呼ばれると、やっぱり嬉しいじゃないですか」

特別なことではない。
意識すれば、誰でもできること。

けれど、それを欠かさず続けてきた。

初めて来た人にも、何度か顔を合わせている人にも、できるだけ同じように声をかける。

人見知りだった頃、声をかけられずに立ち止まっていた自分。

その記憶があるからこそ、「声をかける側」でいることを選んでいる。

小さな行動の積み重ねが、関係をつなぎ、信頼が生まれ、《笑いの絶えない居場所》を形づくっていった。


今も、途中にいる

常に元気な印象を持たれがちだが、気持ちが落ちる時期があることも、彼女は隠さず話す。

ただ、その状態との向き合い方は、以前とは少し変わってきている。

今の自分について、彼女はこう話す。

「戻るきっかけは、だいたい分かっているんです」

運動をすること。
友達と話すこと。
ラフターに人が集っているとき。

落ちたら、また戻ればいい。
そう思える感覚が、少しずつ自分の中に残ってきた。

だから今は、無理に気持ちを引き上げようとはしていない。

立ち止まる時間もまた、次に進んでいくための大切な時間なのだと感じている。


本人より

もしこの記事を読んでいて、ちょっとでも楽になったかも、って思ってもらえたら嬉しいです。

ついでに、ラフターにも遊びに来てくれたら、もっと嬉しいです。

あと、いろんなことを含めて今関わってくれてる人や、これまで関わってきてくれた人に、感謝の言葉を伝えたいです。

いつも、いつも、本当にありがとうございます。


編集後記(インタビュアーより)

話を聞いているあいだ、重たい空気になることはほとんどありませんでした。

彼女はよく笑い、よく考え、自分の状態をそのまま言葉にしてくれました。

何かを決めきるための時間ではなく、「今どこに立っているか」を一緒に確かめるような取材だったと思います。

続けてきた理由が曖昧なままでも、人との関係はちゃんと残っている。

そんな明るさが、静かに伝わってくる時間でした。

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